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4.事業承継の上手な進め方は?

<1>自社株の相続税評価額

 相続税額算定の基礎となる自社株の相続税評価額については、よく、このようなお話を耳にします。
「額面は一株500円の株式なのに、相続したら、税務署から50倍の25,000円で評価されてしまい、相続税が払えなくなってしまった…。」
 未公開会社の株価が高く評価される要因は、

1.会社自体に収益力があり、内部留保が厚い
2.会社の本業自体では利益が出ないが土地や有価証券等に多額の含み益がある
3.配当金額が高い
等が挙げられます。
 いずれにしても、これらの要因が複合的に絡み合って株価を上昇させるのです。事業承継を行う場合、株式の移動は避けて通れません。その際に、これから移動しようとしている株式が相続税評価額でいくらで評価されるのかを事前に知っておくこと、ひいては相続財産全体で、どのくらいの相続税を納める必要があるかを知ることは、非常に重要なことです。
 では、具体的にどのように未公開会社の株式を評価するのでしょうか。
 財産評価基本通達によれば、オーナー会社の株式の評価は、

(1) 類似業種比準方式
(2) 純資産方式
(3) (1)と(2)の併用方式

で行われるのが一般的です。
(1)〜(3)のどの方法で株価評価するかは、会社の業種(卸売業・卸売業以外)・規模(売上高・総資産・従業員数)により判定されす。
(1)の評価方法によれば、御社が同業他社にくらべて、配当金額・利益金額・純資産額の3点の総合評価が良ければ、その分、株式評価額も上昇します。(2)の評価方法によれば、御社が土地や有価証券等で含み益のある資産があれば、その分、株式評価額も上昇します。(3)の評価方法は(1)と(2)を併用する訳ですが、その併用割合は会社の規模により決定されます。
 オーナー会社で内部留保が厚い会社、土地等に多額の含み益のある会社、及びここ数年間の業績が非常に好調である会社は、一度専門家に依頼して自社株の相続税評価額の算定をすることをお勧めします。事業承継における株価引下げの節税で、過去によく使われた手法は度重なる通達の改正でほとんど有効なものはなくなりました。だからといって、全く、対策方法がなくなった訳ではありません。未公開会社の株価も中長期的に見れば変動しています。毎期継続的に株価の評価を行っていれば、一時的な業績不振等で株価が下がる時もあることに気がつきます。そのような時は、積極的に株式の移動を行うことも可能です(但し、贈与税に注意が必要です)。
 また、配当金が多いために株価が高く評価されている場合は、配当金を減らして役員報酬や役員賞与を上げることも株価引下げの役に立ちます。さらに、役員の方に万が一の事があった場合、役員退職慰労金や弔慰金を支払えば会社の内部留保をはきだした上、利益金額を下げることもできます。そのためには、役員退職慰労金規程の整備や退職金・納税資金確保のため、生命保険の利用など、やるべきことは沢山あります。
 即効性のある節税手段は、リスクが高いので、まずは、自社株評価額の現状を把握して中長期的観点で対策を考えるのが最善策ではないでしょうか。
 このように、事業承継における株式評価額引き下げは、一歩づつ、地味ではありますが、個別に山積する問題を解決していく過程なのです。
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